映画レビュー

映画フィッシュマンズの魅力<ファンの思いを172分にこめて>

本作の強さは、遺された者たちの姿にある。
茂木欣一の誠実さと強さが佐藤伸治のカリスマをギリギリで乗り越える。
その事実が本作を優れて現代的なレヴェルに引き上げている。

そして驚異的な高音質。

映画館でこれほど音の良い作品は存在しなかったと思う。
<映画公式ホームページから引用>

日本を代表するジャズミュージシャン菊地成孔さんのコメントです。

フィーナーレで演奏される「ゆらめき IN THE AIR」。

ステージ上中央には、東京スカパラダイスオーケストラのメンバーであり、フィッシュマンズのリーダー、ドラムス茂木欣一さん。
その周囲に、かつてバンドを離れ再び音楽の元に集ったメンバー達、そしてクラムボン原田郁子さんの姿。

1999年に亡くなったヴォーカル佐藤伸治さんはそこにいません。
でもその声が、同じく姿のないHONZIさんのヴァイオリンの音色と一緒にゆらめいているのです。

圧巻。その一言でした。

あるべきところにある音楽。
成すべきことを成す音楽。
有限な時間の中で無限の広がりを見せる音楽。

この映像だけでも人生が動くぐらいの力がある、それが映画フィッシュマンズです。

ファンの思いが出発点

  • 集まった金額 18,276,687円
  • 支援者数   1,157人

映画制作の資金を集めるために立ち上げたクラウドファンディングの結果です。

開始当初の目標金額は一千万円だったので、プロジェクトとして大成功だったといえるでしょう。
なお、達成後は第2第3目標を立て、リターンを充実させていくなどの工夫をされています。

発起人は坂井利帆さん。
1991年のデビュー当時からフィッシュマンズのファンであり、この映画のプロデューサーです。

きっかけは断捨離ブーム

昔のアルバムや手紙の処分をしていた坂井さん。

そこにラジオ番組やライブを収録したカセットテープが出てきたそうです。

坂井さん
坂井さん
この個人的な宝物を倉庫から取り出して、今のファンの人達にも見せてあげるべきではないか

そんな思いがきっかけとなり繋がって、ヴォーカル佐藤伸治さんがこの世を発って20年目の年、映画の撮影が開始されることになったのです。

制作予算2千万円をどうやって用意するか

映画制作の合計予算2千万円の半分を集めることを目的として、クラウドファンディングが立ち上げられました。

おんどころたか
おんどころたか
クラウドファンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語。
インターネットを使って不特定多数の人々から資金を調達する仕組みです。大きく3種類に分類することができ、購入型、寄付型、投資型があります。

なお、映画フィッシュマンズのクラウドファンディング は購入型、つまり支援に対して商品やサービスのリターンがあるものです。

映画制作の予算内訳は以下の通り。

  • クラウドファンディング手数料(ファンド金額の10%)100万円
  • 過去の秘蔵映像VHSデジタイズ費 100本で150万円
  • JASRAC (本編中20曲以上の楽曲使用予定)20曲以上で150万円
  • 撮影費(人件費、機材費、車両、スタジオ等)20日間で600万円
  • 撮影後納品までの編集含む映像作業 250万円
  • 支援者へのリターン用グッズ制作費 200万円
  • TV出演映像購入費 250万円
  • 映画宣伝費 200万円
  • 英語字幕 100万円
おんどころたか
おんどころたか
バンドのドキュメンタリー映画はお金がかかると言われますが、権利関係だけでもかなりお金が必要なんですね。

集まった資金

リターンについての詳細はクラウドファンディングページをご覧ください

( )内が支援者数です。

  • 500円_A(64)
  • 3千円_ B(217)
  • 1万円_ C(512)
  • 3万円_ D(50)
  • 3万円_ E(80)
  • 3万円_ F(192)
  • 5万円_ G(20)
  • 5万円_ H(8)
  • 7万円 _  I(5)
  • 10万円_ J(3)
  • 10万円_K (6)
  • 100万円_L(0)

100万円の支援(企業向けプライベート上映会コース)だけ、応募がなかったようです。

応募があった中で、最も支援金が集まったのが3万円_F×192名=576万円。
こちらのリターン内容のみご紹介させていただきます。

  • 随時更新される、製作レポート
  • 劇場招待券1枚
  • 映画DVD1枚
  • 映画限定グッズ
  • 本編未収録映像が盛りだくさんの特典映像DVD1枚
  • 映画オリジナルTシャツ
  • 劇場用パンフレット
  • 「完成披露試写会」のイベントをYoutubeLiveで支援者限定公開
  • 映画エンドクレジットにお名前掲載 <Special Thanks>

思いは伝えなければ思いのまま。

それを形にするためのクラウドファンディング 。
フィッシュマンズへの一人一人の思いが数字となって明確に表れ、未来の映画完成につながったのです。

著名人からの数々のコメント

映画フィッシュマンズには、スピッツの草野マサムネさん、俳優の竹中直人さん、アーティストの村上隆さんをはじめとした、多くの著名人からコメントが寄せられています。
その中から、映像に出演している4名の方のコメントを抜粋してご紹介します。

クラムボン原田郁子さん
クラムボン原田郁子さん
とんでもない音が鳴っているんですよ、目の前で。
真心ブラザーズYO-KINGさん
真心ブラザーズYO-KINGさん
言葉はすごく選んでいるんだろうな、と思いましたね。推敲というのかな。
ハナレグミさん
ハナレグミさん
使われているのは、いつも自分の身近にある顔と同じ顔している言葉なんです。
UAさん
UAさん
あんなふうにはできないけど、あんなふうでありたいって今も思ってる、ステージの上で。

 

皆さんの言葉から、ヴォーカリストが無くなって20年たった今でも広がりを見せ続ける、音楽のチカラを感じますね。
まさに「音楽はマジックを呼ぶ」

バンドは人と人との物語

1987年に結成したフィッシュマンズは、

  • メンバーの脱退、
  • 再編成、
  • レコード会社の移籍

などを経験し紆余曲折ありながらも、その時その場所でしか生まれない音楽を作り続け、ファンを魅了し続けます。

そんな音楽の旅路の途中、1999年ヴォーカリスト佐藤伸治さんの死去により、バンドは実質的な活動休止状態になりました。
しかし一人残ったオリジナルメンバーである茂木欣一さんの、意思の力と思いの深さ、そしてそれにもとづく行動により糸はつながり、ついには2005年に再始動することとなります。
そしてご存知のようにたどり着いた映画公開。
172分に凝縮された歴史は、フィッシュマンズが今後さらに世界に影響を与えていくことを予感させるものとなりました。

バンドは人と人との物語。

様々な出会いの形を経て、まずは好きな曲を共有し、ドキドキしながら初めてのスタジオに入ります。録音した自分たちの音を聞いて軽く絶望することもあるでしょう。
でも自分を正確に把握することは、その後の成長へと導いてくれて、音楽はさらに楽しくなっていきます。

夢を語り合って、多くの時間を共に過ごし、音楽を形にしていく作業を続けます。

人間と人間の関係性が深まるにつれ、自我が遠慮なく姿を現わすようになると、音楽性、人生観の違いから衝突し、バンドを去ることを決めるメンバーが出てきてもおかしくありません。

またバンドの活動が転がりはじめると、メンバー以外との繋がりも増え始めます。
リハーサルスタジオの店員さん、ライブハウスのPAさん、観に来てくれるお客さん、対バンしたバンドのメンバー、音楽事務所の社長さん、雑誌社の記者さん、ラジオ番組のディレクターさん。
音楽を中心にした世界は、人の繋がりが増えるごとに膨らんでいき、可能性を大きくしていきます。
そしてそれと同時に複雑さも増し、歪みが起こりやすい状態になることもあります。

それでもバンドマンは、なぜバンドマンであり続けようとするのでしょう。
なぜバンドマンはその音楽と一緒に生き続けるのでしょう。

最後に、その答えの鍵である茂木欣一さんの言葉をご紹介します。

僕にはすごいしっくりくるんですよ。
フィッシュマンズの音楽が、佐藤くんの言葉が、メロディが。

驚異的な音の映画フィッシュマンズ。
現在過去未来、バンドにつながるアナタにぜひ映画館で観ていただきたい作品です。


佐藤伸治さんが存在するフィッシュマンズとして事実上最後のライヴ映像。

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