音楽人の人生研究

【好きなこと一生】何かを成し遂げようとするときに避けたい思考

今回のテーマは「何かを成し遂げようとするときに避けたい思考」についてです。
何かを成し遂げようとするとき「自分の限界までやってみて、それでもダメならダメ」という思考は、一見心意気、ともすれば決断力のあるもののように思えます。しかしその思考は、

  • 実はスタート地点で自分の実力と誰か他の人の実力を比較することで劣等感を感じ
  • 挑戦するでもなくすでにあきらめていて
  • その真意がばれて恥ずかしい思いをしないように、強そうな言葉で言い訳している

そんなものではないでしょうか?

「何かを成し遂げている人」に共通するのは継続力を身につけていることだと思います。スタート地点ですでに「いかにして継続していくか」ということを考えられることは、継続の重要性、大変さ、そしてその先にある成長と喜びを知るものであり、それは過去の経験によって築かれた能力とも言えると思います。この仮定について、筆者自らの経験と、筆者の知る「成し遂げている人」の特徴から考察してみたいと思います。その結果がこれから何かを成し遂げようとしている人たち(自分も含め)にとって未来へ向けた有効な鍵となることを目指します。

筆者は「成し遂げる」ということについてこれまで数多くの失敗を繰り返してきました。そんな失敗の中から、これまでのバンドマン人生で一度だけ所属した音楽事務所にまつわる経験についてのお話から考察を初めてみたいと思います。

他人に用意された未来を受け入れることは継続を無視している

「自分はそんなことしない」とか「自分は絶対大丈夫」と思っている人は気をつけた方がいいでしょう。

なぜそう言えるかというと、筆者自身がそうだったからです。ここではその経緯、詳細を割愛しますが、過去に100万円の絵を買ったことがあります。正しくは、買った、ではなく、うまいこと買わされた、のかもしれません。でも完全に挫けそうだった自分を奮い立たせ、ローンを払い続けさせるために「この絵はあくまで自分の意思で買ったのだ」と思い込むようにしていました。前述したように「そんな100万円の絵なんて誰が買うの?」と思っていたのは僕です。そして買ってしまったのも僕です。

前置きが長くなりましたが、そんな風に人は置かれた状況によっては「周囲、もしくは振り返れるようになった自分から見るとおかしな」行動を取っていることがあります。

17歳からバンドマン人生を歩み始めた筆者が初めて音楽事務所に所属したのは29歳のときでした。六本木のライブハウスで声をかけられ、それから漫画に出てきそうな接待を受けたり、東京〜青森間のツアーやラジオのレギュラー出演、2,000人規模のホールでのライブイベント出演など「ついに成功に一歩足がかかった」と喜びの日々を過ごしていました。その当時の思考状況は「やっとつかんだチャンス、ここに賭ける!」というものでした。
しかし言葉が表すようにそれは「賭け」であり、負けることもありえたわけです。そして「継続」をしっかり認識していたならあんな行動は取らなかったでしょう。

事務所での活動にも慣れてきたころ、(振り返ってみれば)おかしな状況が生まれてきていました。最初のツアーでは宿泊先はビジネスホテルでした。そして時がたち健康ランドになり、そして行きついたのは車中泊でした。もちろん車中泊でツアーをしているバンドさんもいて当然です。それを自らの意思で行うということは誰も不幸にしません。しかし僕たちは、なんとなく、いつの間にか宿泊レベルを落とされて、それが当然のように扱われ、若干不幸と戸惑いを感じていました。「ん?ん?ん?何?」といった感じです。
そんな僕らメンバーの中の「疑い」の気持ちが強まり、思い切って「今後仕事としてバンド活動をしていけるのか」というようなことを聞きました。それに対して指示されたのが以下の2点です。

  1. (生計のために働いていた)仕事をやめること。
  2. (実際見に行った)新宿のマンションにメンバーで住んでもらうのでツアー前には今住んでいる所を解約しておくこと。

僕らは当時その活動に「賭け」ており、いつのまにか「賭け」られる資金となるメンタルも弱くなっていたのでもう言われるがままです。マンションの外観を観に行ったときなど、その後のツアーへ向かう車中まで喜びを持ち込み、みんなでアホのような顔をしていたと思います。つまり他人に用意された未来を受け入れることで安心し、その場所を安全な場所だと思い込み、継続に対する努力工夫を怠ったのです。
ツアーから帰ってきてもマンションには入居できず、一時的な報酬を受け取るもののそれも微々たるもので、その後もツアーから帰ってくるたびに「入金が遅れていて」とか「もう少し準備に時間が必要」などと言い訳をされ、結局僕はギタリストの実家に居候させてもらうことになりました。
最終的には事務所に対し、今何が起こっているのかを説明してもらうよう主張し、その状況(ここでは割愛)を知り、事務所を辞めることになりました。

この経緯の中で起こっていたことを紐解くと

  • 事務所が僕らのバンドを加入させることによって売上利益を上げられる、と思っていたのは確かでしょう。
  • しかし事務所はイベントライブ、ツアー、ラジオ、ほとんどの活動に必要な資金を不確かな入金予定に頼っていました。
  • その予定していた調達先から入金が無いことがほぼ確定し活動が回らなくなってきました。
  • そしてその時点で僕らのバンド活動自体をストップせざるを得ない状況になりました。

ここでの教訓は「騙した騙された」とか「ちゃんと確認しなきゃ」とかではなく、もし本当に自分が成し遂げようとするのであれば、事務所に所属した後も「継続していく方法」をきちんと考えるべきだったし、リスク管理をしておくべきだった、ということです。
継続していくために最も大切なのは気持ち、ではなく「時間の使い方」と「資金の調達方法」です。「時間」をどう有効活用し「資金」をどう調達し、「資金不足」が懸念される際はどうやって調整するか、そこまで考え工夫努力することが「成し遂げるために」必要なのだと思います。

成功するためにはストイックであるべきと考えるのは危険

上京して住む場所を決めるために訪れた不動産店において、僕のした質問が
「音楽をやるにはどこに住むのが一番良いですか?」というもの。それに対して担当の方の答えが
「音楽といえばやっぱり下北沢か高円寺ですね」というものでした。
なんともアホなやりとりですね。音楽やるのにどこに住むかとか、どこでもいいっていう話ですよね。

これは先入観というか情報の無さにも起因していますが、まず僕は下北沢に住むことを決めて安心しました。そしてバンドで成功しに来たのだから、仕事も音楽に関わるものを、と考えライブハウスに勤めました。時給は日中で800円弱、深夜でも1,000円はいっていませんでした。家賃も4万円程度でしたが、それでも働けど働けどという感じで生活は厳しく、しかし自分の中で「こういう状況が必要なんだ」と思い込んでいました。

でもからくりを紐解くと、実は自分がバンドをやっている以外の時間帯で多くお金を稼げた方が

  • 生活が楽になる
  • バンド活動にも身が入る
  • 空き時間ができるのでそこでライブハウス等に行き音楽を吸収できる

という利点があります。当たり前じゃん、と言われそうですが、僕は思い込みによって音楽の修行僧のような精神状態で、会社員をしながらボーナスなどもらってバンドをやっている仲間を見ると、まぁしょせんそのレベルだなと、実は低い位置なのに高い所にいる気分で見下ろして思っていました。その時点で何も見えていません。見ているのは自分が作り出した都合のいい空想世界です。
約1年経ち、自分のバンド活動もうまくいかず(解散と首を経験しました)、生活も苦しいままの僕はライブハウスを辞め臨時日雇い仕事につき、その過酷な精神状況の中で救いを求めるように100万円の絵を購入し、さらに苦しくなりました。負のスパイラルを見事に形成したというわけです。

ここでの教訓は「いかにして継続して音楽活動ができるか」ということを短距離走者というより長距離走者のような視点で考え、自分の時間を有効活用していけるようにすることが大切、ということです。結果はすぐに出る、またすぐに出そうと考えるのは愚か者か、もしくは騙される人だと思います。経験則から、自分というモデルから。

継続した音楽活動を成し遂げた人たちの特徴

【17歳の夢見る君へ】音楽を仕事にできる人の特徴は?
の記事でもお話していますが、成し遂げた人たちは総じて音楽が本当に好きだし、生活・自分・人生の一部としているし、その結果継続して活動できています。24時間365日という制限はスーパースターだって一般庶民だって同じです。その時間を有効活用し、いろんな他のことがある中でも音楽活動を優先、継続していけるというのは、まさに工夫と努力のたまものです。

そしてその人たちは「ある一つのこと」に固執しません。たとえそれがダメだったとしても別の道、次のステップを実力に基づき用意できています。これはリスク管理能力でもあると思います。彼らがもしかすると他の大切なことに出会って「音楽を見切る」ことはあるかもしれませんが、「音楽に見切られる」ことはまず無いでしょう。なぜならそれはすでに彼らの一部であり、彼らが生きて、意識的に除外しない限り音楽が一緒に存在するからです。

「夢を掴むんだ、わああああああああ!」と激しく躍起になる時点で音楽を見ていません。それは音楽(実際好きなこと)でなく夢(空想の自分)を見ています。音楽が好きなのであれば音楽と共に歩く道を考え、その道の中で音楽と共に情熱を爆発させるはずです。

音楽活動のスタイルとして最も筆者が尊敬しているのが日本を代表するポストロックバンド「toe」です。
彼らの活動スタイルは僕にとって衝撃でした。プロの音楽人となるためには、他のことをやるべからず、そんな風に青春時代から生きてきたバンドマン人生。
しかし「toe」の活動スタイルはその真反対で「4人のメンバーそれぞれが音楽以外に職業を持ち、音楽もプロとして活動する」というものでした。ちなみに各メンバーのそれぞれの職業は以下の通りです。

  • ギタリストの山㟢廣和さん→インテリアデザイナー
  • ベーシストの山根敏史さん→ファッションデザイナー
  • ギタリストの美濃隆章さん→レコーディングエンジニア
  • ドラマーの柏倉隆史さん→セッションミュージシャン

二人は音楽関係、二人は音楽以外の仕事です。そしてこれらの仕事の特徴は、一年を通じて各週の定休日があるような勤め人ではなく、会社経営、フリーランスといったつまり「仕事を1件ずつ受注し、それを行う期間を交渉、調整できる仕事」なのです。
またメジャーレコード会社等と契約せず自主レーベルとして音源等発表していますが、このことから言えるのは「音源リリース時期や内容について他人に指示されることがない」ということです。ぶっちゃけ音源が売れなくてもtoeは活動し続けられるでしょう。まぁ音源も売れるし、ライブも埋まるけど。それはtoe自身が築き上げた継続可能なスタイルなのです。

貴重なお時間使ってお読みいただきありがとうございます。
今日も引き続き大切な時間、よい一日をお過ごしください。

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